2018年2月21日水曜日

沖縄O-1グランプリ2018③ おっぱい ぼんみかち! ~決勝戦のネタ翻訳~


出場順を決めるくじを引いてから1番目の演者が舞台に上がるまでの時間は非常に短い。そういう意味でもトップバッターは避けたいところです。

にもかかわらず。結果はこうなりました。表情が全てを物語っています。







大変なことになりました。くじ引きの段階で、彼らはまだ一回戦の時の衣装を着ています。この後ほんの数分でエイサー姿になってなければいけないんですよ。

私は県外の人間なので、エイサーの衣装を着るのがどれだけ大変なのかは想像でしか分からないんですが、みるからに大変そうです。

じゅん選手は裸足で舞台に立っていましたが、実はあれ、サバ(島草履)がどこに行ったか分からなくなったからだそうです。

エイサーの姿はきちんとしていないといけない。だから、ちゃんと着られているかの確認が大変だったという旨の話もしていました。

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ここから先は、うちなーぐちが含まれている部分を分かる範囲で文字起こしをし、なんとか標準語訳にチャレンジしてみます。一回戦の言葉よりも難易度が高かったです・・

間違いも少なくないと思います。無いよりはまし、くらいのお気持ちで読んで下さると嬉しいです。

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おじい
くぬ ちゅ ぬ いいし が あたとーん どー やー (この 人 が 言うこと が 当たっている(正しい) の よ)


さんだえんちゅ ちび から まやー が とぅんでぃち えんちゅ ぐゎー が うちくゎてぃ たましぬぎた さ (汚いネズミ(の) お尻 から 猫 が 飛び出て ネズミ が 食べられて (腰が抜けるくらい)びっくりした わ)
*1月の喜笑転決ライブでもこのセリフが出てきて、それをうちなーぐちで言い換えていました。それを参考にして訳してみました。(辞書には「さんだ」と聞こえる単語が見当たりませんでした)



はっさ かしまさぬ やー (ああもう うるさい な)

やー や わかさい とぅちゃーは (おまえ は 若い 時 は)
*文法書通りだと「とぅち+や→とぅちぇー」なんですが、聞こえたとおり書いてみました。

おっぱい パパヤーふーじし ぼんみかち (おっぱい(が) パパイヤ みたいで ぼーんと張ってて)

なま なてぃ なーべーらー なー なーべーらー (今(と) なって(は) ヘチマ もう ヘチマ)



ぬー ぬ なーべーらー (何 が ヘチマ (よ))

あんしぇ やー むのー ぐなー ぶんじらー や (それじゃあ あんたの ものは ちっちゃな 棒 ね)

みみじゃー がやっさ みみじゃー (ミミズ かしらね ミミズ)
*聞きとれませんでした・・

いわんけー ひゃー (言うんじゃねーよ)


やしが かなさん どー (でも 愛してる ぞ)

ぬー やが やー なま なてぃ はーごーさー あれー やー (何 なの よ 今(に) なって 気持ち悪いわ あの人)

かなさん どー て (愛してる よ)

わん とぅ まじゅん にーびち し にふぇー やん どー はるこー (ワシ と 一緒に 結婚し(てくれて) ありがとう な はるこ)

あいえなー まじゅん にーびちし にふぇー やん どー はるこー はるこー? (あらやだあー 一緒に 結婚し(てくれて) ありがとう な はるこ はるこ?)

はるこー んでぃちぇー たー やが (はるこ っていうのは 誰 なの)

わねー みよこ やしが や! (私 は みよこ だけど ね(みよこじゃないの)!)

あぎじゃびよい! (やっちまった!)




じゅん選手が作るネタでは、おじい・おばあは常にほのぼのと可愛らしい存在として登場します。

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弱い立場の人を見下したり、体型的な欠点をイジったりすることで笑いをとるのは比較的簡単。

例えば老人・極端に太っている人・ハゲている人・知能や身体能力にハンデを抱えている人など。よくお笑いネタとして出てきませんか?

むやみに相方を叩いたり、芸歴の浅い芸人を先輩芸人が過度にイジることもよくありますよね。

イジりっぱなしで突き落とし、誰も救いあげてやらないままコーナーが終わる。そんなお笑いを見た時には、可哀想な気持ちが先に立って、笑いどころじゃなくなります。

人を傷つけて得られる笑いにどんな魅力があるんでしょう。

そういう笑わせ方しかできないのかアンタらは。リアルでそれをやったら単なるイジメ、公開処刑。芸人を名乗るなら芸で笑わせろ。

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沖縄のお笑い、特にじゅん選手の老人ネタは安心して見ていられます。このネタも、老人にありがちなことを題材にして笑いを狙っているんだけれど、決して彼らを笑いものにしているわけではない。

人柄はネタに絶対現れる。恐らく彼は、年齢を重ねて生き抜いてきた人生の大先輩を敬い、常日頃から温かい気持ちで大切にしているんじゃないかな。だから見ている側も、ほのぼのとしたあたたかい気持ちになれるんじゃないかな。彼の舞台を見るたびにそう思うんですよね。

ハンサムの金城さんが扮する護得久栄昇という民謡の先生は、実に沖縄らしい存在だと思っています。彼は民謡の大家(たいか)。内地と比較すると、おそらく沖縄では、民謡は身近なもので、存在感も大きい。だから言いたい放題で自由奔放に振る舞う姿が、多くの人の共感を得たのかもしれません。同じことを東京でやっても絶対成立しない笑いです。民謡はごく限られた人がたしなむ芸事、という扱いですから。

初恋クロマニヨンが取り上げた基地関連ネタも、さじ加減を間違うと笑いを飛び越えて要らぬ怒りを誘発しかねません。内地の芸人には絶対できない危険なネタです。安心して笑えるラインを狙うには、基地問題に関する多くの沖縄人のホンネを肌感覚で理解していなければならない。そんな風に思いました。


エイサー・沖縄民謡・基地問題。決勝戦のネタは実に沖縄らしいものばかり。

沖縄のお笑いは沖縄でしか見られない。

O-1観覧者応募ページに私はそう書いたんですが、これは、単にネタが沖縄らしいかどうか、ということだけじゃないんですよね。

もし彼らが内地に営業でやってきて同じネタをやったとしても、沖縄と同じ笑いを生み出すことは難しい。お笑いは、芸人と観客の相互作用で成り立っているからです。だから、沖縄のお笑いは沖縄で見なきゃいけない。私、そう思うんです。

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誰が優勝してもおかしくない。接戦になりそうだ。自分の投票を済ませ、発表の瞬間を待ちました。

観覧者は舞台右側に設置されているモニターで、芸人は舞台下にあるモニターで、それぞれ得点を知ることになります。

大きな効果音と共に、得点は桁を分けて段階的に発表されていきます。





じゅんとすけとハンサム、両方に「15」と入った!

優勝に気付くまでの数秒間、足元にあるモニターを凝視したまま固まる3人。

そして、勝ったのは自分たちだと分かった瞬間、喜びよりも驚きで感情の大爆発を起こしてました。「マジで?」「マジでー?」という叫び声がマイクを通さずに聞こえてきます。そりゃそうでしょう。たったの79票差ですもんね。大接戦です。

そんな驚きが落ち着く間もなく、表彰式と記念撮影に入ります。





うちなーぐちが分からない、方言札が何なのかを知らない世代の人も沢山いる。そんな中で、うちなーぐちにこだわり、沖縄の文化に根差したネタで頂点に立った彼ら。あのネタで勝てたことには本当に本当に価値がある。通じない言葉で人を笑わせる。そこには綿密なネタ作りとしっかりした演技力が不可欠です。

愛するものを守り抜いてとる笑いの素晴らしさ。弱者をおとしめてとる笑いの対極です。本当の意味で芸人といっていい。胸を張っていいと思います。

よくやった。ほんとうによくやった。

喜びの涙が止まらなかったのは私だけではなかったんですよ。お笑いライブで拝見したことがある熱心なファンの人達も泣いてるんです。私なんかと比べ物にならないくらいライブに足を運び、芸人さんを応援し続けている方々。その方たちが泣いている。じゅんとすけの優勝というのは、やはりそれだけすごいことだったんだ。

そんな場面に立ちあえた私は、ファンとしてとても幸運でした。ないちゃーの私を選んでくれてありがとう沖縄テレビ。


オンエア後の舞台の様子を撮影したんですが、その途中でありんくりんのクリスが泣きだしました。





この後、様々なメディアのカメラマンが3人を撮影する為に舞台に上がったり降りたり。それが済んで3人が舞台から降りた時、内地から持ってったしまー(泡盛)を渡したんですが

みっちゃいし ぬでぃとぅらせー

思わず口をついて出た一言は、なぜかうちなーぐちでした。嬉しかったです。たとえこんな簡単なひとことでも、自分が言いたいことが自然に言えるようになっていたことが。

ちゃんと3人で飲んだかねえ・・ (^-^)